新興国に続き、主要先進国が次々に異例の金融緩和から出口戦略への方針転換を推し進めている。先週には欧州中央銀行(ECB)が2年6カ月ぶりとなる利上げに踏み切った。トリシェECB総裁は、連続利上げの可能性を否定したが、追加利上げの可能性には含みを持たせている。イングランド銀行(BOE)でも、インフレ率が目標とされる2%を大幅に上回っているため、5月の利上げ期待は根強く英ポンドを支えている。米連邦準備制度理事会(FRB)でも物価上昇や失業率低下からインフレ抑制のために利上げの必要性が示唆され出口戦略へ軸足を移行しつつあるが、欧英に対して出遅れ感が残り、金利動向の面から米ドルは軟調な展開が続いている。金融政策から見ると、主要通貨の中で米ドルが優位になれるのは、大震災の影響を受け量的緩和政策の継続を余儀なくされている円だけである。

3月15日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事録によると、当局者は金融緩和の解除を年内に開始するかどうかについて見解が分かれている。「少数の参加者は、経済情勢が年内の金融緩和の縮小に向けた動きを正当化する可能性があるとの考えを示した。一方で異例の緩和策が2011年以降も正当化される可能性があると指摘した参加者も少数ながらいた」と記録されていた。

本来FRBは、「雇用と物価の安定」を守ることが任務とされている。米国でのインフレ率は比較的安定しているが、原油価格の高騰によるインフレ懸念や、改善傾向を見せている雇用関連指標の結果を受けて、軸足を出口戦略に移行していることは間違いないであろう。改善傾向の見受けられない住宅市場は、任務以外ということでの方針転換と思われる。

米国の経済指標以外では、米国のハト派(量的緩和策慎重な見方)やタカ派(量的緩和早期終了、国債買取額減額など)の各連銀総裁の発言が相次ぎ、出口戦略を巡る攻防が続いている。為替市場では発言がある度に振り回される状況である。

4日にFRBのバーナンキ議長(ハト派:投票権あり)が、商品相場高に伴う米インフレ率の上昇は「一時的」なものにとどまると予想したうえで、「この見通しが外れた場合にはFRBは行動するだろう」と述べている。8日には米アトランタ連銀のロックハート総裁(ハト派:投票権なし)も、「経済成長ペースが緩やかなほか、インフレの加速は一時的なものにとどまる可能性が高いことから、金融刺激策の解除には時間をかけるべきだ」との見解を示している。一方で米ダラス連銀のフィッシャー総裁(タカ派:投票権あり)は、FOMCは最大規模の金融緩和策を導入している期間が長すぎるという「著しい」リスクに直面しており、6,000億ドルの国債購入計画の縮小を視野に入れるべきだとの見解を示した。またダラスでの講演で「われわれ金融政策当局は、分水嶺に近づきつつある」と述べ、「責務を果たすため、これまでの異例の緊急措置を継続してきたが、今は時宜を得たやり方で根気強く業務を正常化へと立て直す必要がある」と述べている。

NY連銀のダドリー総裁(ハト派:投票権あり)が「早すぎる金融引き締めに関して過剰に熱を上げるべきではない」と述べたほか、シカゴ連銀のエバンズ総裁(ハト派:投票権あり)も、商品市況上昇は金融政策に小幅な修正をもたらすにすぎないとの考えが伝わった。イエレンFRB 副議長(ハト派:投票権あり)も「FRBが金融引締めをするほど米経済は十分に強くない」、「資産購入プログラムや低金利政策は、失業率を低下させるために必要」、「食品、燃料価格の上昇がインフレや個人消費に与える影響は一時的」と見解を示したことを受けて米長期金利が低下し米ドルの上値を抑えている。

現在、金融緩和政策を巡ってFOMC内でも意見が分かれていることで、出口戦略の方向性や利上げ期待の度合いが為替市場に多大な影響を与えることになる。今週は米消費者物価指数の発表やFRB高官の発言が複数予定されており、金融政策見通しに与える影響の観点から注目される。経済指標の結果と発言内容には十分注意する必要があろう。

Written on 6月 4th, 2011

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