東日本大震災などの影響もあり日本経済は低迷しているものの、新興国が牽引役となり世界経済は回復基調を保ち、企業収益は復調している。だが、日米独の長期金利は低下傾向が続いており、投資マネーは安全資産を目指しているように思われる。債券市場では、投資マネーの流入で買われ価格が上昇すると、利回りが低下することになる。
米国の企業業績は予想以上に堅調で、ダウ工業株30種(NYダウ平均)は高値圏での取引が続いているが、不安定さが残り一進一退が続いている。欧米の景気は比較的堅調で金利上昇を招きやすいが、マネーは安全資産の国債に向かっていると思われる。背景には、最近の欧米の経済指標で良し悪し入り交じり、景気回復の先行きに懸念が出始めていることにある。米国の4月雇用統計で雇用者数は予想を上回ったが、失業者は9.0%と依然として高水準である。また新築・中古住宅件数は落ち込み、住宅市場にも二番底への懸念がある。米連邦公開市場委員会(FOMC)は量的緩和第2弾(QE2)の6月終了を決めたが、これまで買い取った国債保有残高は維持する方針で、このことが国債売り圧力を弱めている。欧州でもギリシャ債務問題の進展が見られず、欧州中央銀行(ECB)のトリシェ総裁は6月の利上げ示唆を見送った。
また、日米独の長期金利が、4月中旬を境に低下傾向に転じた。米10年物国債利回りは3.5%台から3.1%台に低下し、欧州国債の指標であるドイツ10年債物利回りも3.4%台から3.0%台に低下している。日本10年物国債でも4月11日に1.335%だった利回りが、今月12日には1.110%と昨年12月以来の水準となった。まず背景には、商品相場の急落の影響もあった。取引所を運営するシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループが証拠金を引き上げたことによるもので、銀先物は4月下旬に31年ぶりの高値を付けたが、5月に入り急落し、第1週だけでも25%下落を記録した。銀先物の影響は原油や金などにも波及し、原油先物も5月初旬から10%前後の下落となった。先週末にも、独連銀は国内経済成長が今後数ヵ月で鈍化する見通しを示したことや、格付け会社フィッチが、ギリシャの長期外貨・自国通貨建て発行体デフォルト格付けを「B+」と、従来の「BB+」から3段階引き下げたほか、ベルギーの「AA+」格付け見通しを「ネガティブ」に引き下げ、格付け会社S&Pも、イタリア格付け見通し引き下げたことでドイツ10年債利回りが一段の低下を見せている。行き場を失った投資マネーは、安全資産の国債に逃げ込んだ可能性が高い。
日本でも東日本大震災の発生当初は、復興の為に国債が増発されて金利が上昇すると見込まれていたが、2011年度第1次補正予算では国債の増発はなく、財政悪化懸念は目先弱まった。日本景気の本格的な回復には時間がかかるとの見方も、国債が買われる要因となった。今後も商品価格の下落が続けば、金利は一段と低下する可能性があり、また2011年の第2次補正予算の成立の遅れが、日本経済の回復を遅らせる可能性がある。日本10年物国債の利回りは、上昇しても1.3%台の低位で推移するとの見方がある。
さらに、中東情勢の不安定や国際テロ組織アルカイダのウサマ・ビンラディン容疑者が殺害され報復テロのリスクがあり、当面は国債を売る材料は見つけにくい。目先はリスク資産を避ける「質への逃避」を中心とした動きになると思われる。ただ為替相場への影響は、ドイツ債や米国債の利回りの縮小・拡大がユーロや米ドルの短期的な方向性を決めると思われる。
今週は米国の2年(火曜)、5年(水曜)、7年(木曜)債の入札が予定されている。入札が低調となった場合、債券利回りは上昇しUSD/JPYは買い圧力が増すが、入札が好調となった場合、債券利回りは低下して売り圧力が増すことになる。米10年債金利が3.0%を目指して低下する展開となれば、USD/JPYは再び1ドル=80円を割り込み、今月5日につけた直近の安値79円57銭を更新する可能性もあるとみる。また週末の5月26-27日にフランスで開催されるG8サミットで、日本の原発問題や欧州の債務問題が協議されると予想される。リスク回避の円買いに繋がる可能性があるため、円高要因として要注意である。